商品・在庫管理ツールを、Claudeで作る。
Excel管理から無理なく卒業する手順
在庫台帳・発注点アラート・棚卸補助・入出庫記録・商品マスタ整備——自社専用の在庫管理ツールを、非エンジニアがClaudeで作る手順を解説。Chat→Design→Cowork→Codeの順で、Excel管理から無理なく移行する方法を、コピペできるプロンプトつきで中小企業向けに紹介します。
「あの商品、在庫あったっけ?」——倉庫まで見に行き、Excelを開き、実物を数えて、また表を直す。在庫の“ほんとうの数”が、いつも一手間の向こう側にある。そんな状態に、心当たりはありませんか。棚には売り切れが放置され、一方で倉庫の奥には二度と動かない在庫が眠っている。発注のタイミングは担当者の勘。棚卸のたびに休日が消える。——中小企業の在庫管理は、たいてい「担当者の頑張り」でなんとか回っています。
でも、その頑張りは仕組みに置き換えられます。しかも、大がかりなシステムを買わなくても。この記事では、AIのClaudeを使って自社専用の商品・在庫管理ツールを、自分たちの手で作る手順を、専門用語をかみ砕きながら中小企業の方向けに解説します。在庫台帳・発注点アラート・棚卸補助・入出庫記録・商品マスタ整備——今のExcel管理を否定するのではなく、そこから無理なく卒業していく道を、コピペで試せるプロンプト例つきでお見せします。
「ツールを作る」というと、プログラミングができる人の話に聞こえるかもしれません。けれど今は違います。日本語でやりたいことを伝えれば、Claudeが整理し、設計を手伝い、必要ならコードまで書いてくれる。PCが得意でなくても、自社の業務を一番よく知っているあなたこそが「作る人」になれる時代です。読み終わるころには、「うちの在庫管理、まずここから直そう」という一歩が、きっと見つかります。
- 在庫管理ツールで「できること」の全体像(台帳・発注点・棚卸・入出庫・マスタ)
- すぐイメージできる5つの具体シナリオ(Before → After + プロンプト例)
- 非エンジニアでも作れる順序(Chat → Design → Cowork → Code)
- Excel管理から無理なく移行する1〜3か月のロードマップ
- 市販ツールと内製、どちらを選ぶかの考え方と、失敗しないための注意点
具体例に入る前に、まずは「どれくらい変わるのか」のイメージから。
※ 効果はイメージです。商品数や運用の仕方によって変わります。
なぜ、Excelだけでは限界が来るのか
先にお伝えしておくと、Excelは在庫管理の入口として優秀です。手軽で、誰でも触れて、費用もかからない。実際、多くの中小企業がExcelで十分に回しています。ですから「Excelはダメ」という話ではありません。問題は、事業が育つほど次のような“つまずき”が増えてくることです。
ひとつは同時に触れないこと。倉庫と事務所で別々に開けば、どちらが正しい在庫か分からなくなります。ふたつめは入力ミスに気づけないこと。桁を1つ間違えても、Excelは黙って受け入れます。みっつめは「教えてくれない」こと。在庫が減っても、期限が近づいても、こちらから見に行かない限り気づけません。——こうした限界が見え始めたら、それが「仕組みへ一歩進むサイン」です。逆に言えば、限界を感じていないうちは、無理に作り替えなくてかまいません。
在庫管理ツールで「できること」全体像
むずかしく考える必要はありません。在庫管理ツールとは要するに「何が・どこに・いくつあるか」を正しく記録し、必要なときに教えてくれる仕組みです。中小企業で効果が出やすいのは、次の3つの方向。自社のどこから手を付けるかの当てはめ先が見えてきます。
在庫の“今”を正しく残す
- 在庫台帳(品目ごとの数量)
- 入出庫記録(いつ・何が・いくつ動いたか)
- 商品マスタ(呼び名・単位・置き場の統一)
見落としを未然に防ぐ
- 発注点アラート(残りわずかを通知)
- 過剰在庫・不動在庫のあぶり出し
- 賞味期限・使用期限の近い品の警告
面倒な作業を仕組みに
- 棚卸の実数と帳簿の差分計算
- 月次の在庫金額・回転率の集計
- 発注リストの自動下書き
いきなり全部を目指す必要はありません。多くの会社で「まず効く」のは、Aの商品マスタ整備とBの発注点アラートです。ここが整うだけで、欠品と過剰在庫の両方が目に見えて減ります。逆にいえば、記録(A)が乱れていると、気づき(B)もラクさ(C)も土台から崩れます。だからこそ、最初に手を付けるべきは地味でも「記録の整備」なのです。
先に、在庫管理の言葉をやさしく
作り方の前に、これだけ知っておくとClaudeへの指示がスムーズになります。むずかしそうな言葉ですが、中身はどれもシンプルです。ふだん使っている感覚と、言葉を結びつけておきましょう。
商品マスタ・SKU
- 商品マスタ=商品の「戸籍」台帳
- SKU=色やサイズまで区別した最小の管理単位
- ここの表記が揃うと在庫が正確に数えられる
発注点・リードタイム
- 発注点=「これを切ったら発注」の目安数
- リードタイム=頼んでから届くまでの日数
- この2つが分かると欠品を先回りで防げる
棚卸・在庫回転率
- 棚卸=実際に数えて帳簿と合わせる作業
- 在庫回転率=在庫がどれだけ動いているかの指標
- 回転が悪い=お金が在庫の形で眠っている
これらは「新しく覚える知識」というより、いつもの業務に名前を付けただけ。名前が付くと、Claudeにも社内にも意図が正確に伝わり、仕組みづくりが一気に進みます。
在庫管理ツールでできる、5つの具体シナリオ
ここからは、実際の場面に沿って「何ができて」「どんなプロンプトで作るのか」を具体的に見ていきます。( )の部分を自社の内容に差し替えるだけで、そのまま試せます。
1バラバラの商品名を、ひとつの「商品マスタ」に整える
できあがるもの:すべての土台になる「商品マスタ」。ここが揃うと、以降の在庫台帳・発注・棚卸がすべて正確になります。在庫管理はマスタ整備が9割です。逆に、ここが乱れたまま先に進むと、あとで必ず「数が合わない」壁にぶつかります。時間をかける価値のある、最初の一歩です。
2「残りわずか」を、勘ではなく仕組みで知る(発注点アラート)
できあがるもの:「いま発注すべき商品」の一覧。欠品による機会損失と、過剰在庫による資金の眠りを、同時に減らせます。
3丸一日かかっていた棚卸を、差分だけ確認する作業に変える
できあがるもの:棚卸差異のレポート。全部を見直すのではなく「ズレた品だけ」を追えばよくなり、棚卸が半日仕事に変わります。しかも差異の金額まで出るので、「どこから確認すべきか」の優先順位が一目で分かります。
4「いつ・何が・いくつ動いたか」を、その場で記録する(入出庫)
できあがるもの:在庫が動いた履歴(入出庫記録)。「なぜこの数になったか」を後から追え、差異の原因究明も棚卸も一気にラクになります。ここは仕組み化=Codeの段階で作り込む部分です。
5眠っている在庫と、月末の在庫金額を「見える化」する
できあがるもの:在庫の健康診断レポート。処分・値下げの判断材料になり、「在庫はお金が形を変えたもの」という感覚が社内に根づきます。
この5つは、バラバラの機能ではありません。①商品マスタで土台を整え → ②発注点で欠品を防ぎ → ④入出庫で数を正確に保ち → ③棚卸でズレを正し → ⑤集計で経営に活かす。ひとつながりの流れになっています。全部を一度に作る必要はなく、自社にとって痛みの大きいところから1つ手を付ければ、そこを起点に自然と隣の機能へ広がっていきます。まずは「どのシナリオが、いちばん自社に刺さったか」を1つだけ選んでください。
作る順序(Chat → Design → Cowork → Code)
「ツールを作る」と聞くと身構えてしまいますが、順番を守れば非エンジニアでも進められます。大切なのはいきなりコードから入らないこと。当社研修の Chat → Design → Cowork → Code というメソッドに沿って、触る→設計する→一緒に作る→組み込む、の順で無理なく進めます。
まず触って確かめる
今のExcel在庫表をClaudeに見せて「項目の過不足を教えて」「表記ゆれを直して」と相談。AIが在庫データを扱える手応えを、ここで体感します。まだツールは作りません。
ほしい形を設計する
商品マスタの項目、発注点の決め方、棚卸のやり方、必要な画面を紙に描く感覚でClaudeと固めます。「何を・どう管理したいか」をここで言語化。作る前の設計図づくりです。
Claudeと一緒に作り込む
集計や発注リストの下書きを、実際のデータ(原価などは伏せる)でClaudeと往復しながら試作。まずはスプレッドシート上で「使える型」に仕上げ、現場で回るか検証します。
ツールとして組み込む
入出庫画面やアラートを、動くWebツールとしてClaudeにコードを書かせて構築。ここまで来ると「内製化」です。本番公開の前には、必ずWeb担当・制作会社に安全面の確認を依頼します。
ポイントは、STEP 3までなら特別な環境がなくても進められること。多くの中小企業は、実はSTEP 2〜3の「Excel・スプレッドシートを賢く使う」段階だけで、欠品と過剰在庫の悩みがかなり解消します。Codeまで一気に行こうとせず、効果を確かめながら進めましょう。Excelの使いこなし自体を底上げしたい方はExcel作業を生成AIで自動化する方法もあわせてどうぞ。
実際に作れるもの(成果物の例)
順序に沿って進めると、次のような「使える成果物」が手元に残ります。どれも外注して納品されるものではなく、自社の言葉と数え方で作った、自分たちのツールです。だから、扱う商品が変わっても、季節でルールを変えたくなっても、自分たちで手直しできます。この「直せる」という感覚こそが、市販ツールにはない内製の一番の値打ちです。
統一された商品マスタ
表記ゆれを解消し、呼び名・単位・置き場を揃えた台帳の土台。
発注点アラート表
在庫が発注点を下回った品を自動で拾い、発注リストを下書き。
棚卸差分シート
実数を入れると帳簿とのズレだけを抽出。棚卸が半日仕事に。
入出庫記録ツール
記録すると在庫が自動増減するWebツール(Codeの段階)。
Excel管理から無理なく移行するロードマップ
大事なのは「今日から全部を作り替える」ことではありません。今のExcelを土台に、効くところから一段ずつ。次の目安で進めると、無理なく移行できます。
| 1週目 | 今のExcelを棚卸しする。使っている在庫表をClaudeに見せ、項目の過不足と表記ゆれを整理。商品マスタの土台を作り、担当を1人決める。 |
|---|---|
| 2〜4週目 | 効く機能を1つ型にする。発注点アラートか棚卸差分のどちらか、悩みの大きい方に絞って型化。まずはスプレッドシート上で運用に乗せ、Excelと並走させて数字を検算する。 |
| 1〜3か月 | ツールへ育てる。効果を確認できたら、入出庫記録やアラートを動くWebツールに。本番公開の前にWeb担当・制作会社の確認を挟み、内製化を定着させる。 |
市販ツールと内製、どう選ぶ?
ここまで内製の話をしてきましたが、市販の在庫管理ソフトが劣っているわけではありません。むしろ、バーコード連携・複数拠点・会計ソフトとの自動連係・スマホアプリまで、作り込まれた市販サービスの完成度は高く、そこを一から内製するのは現実的ではありません。目安はシンプルです。「よくある一般的な在庫管理」で足りるなら市販、「うちならではの数え方・呼び方・ルールに合わせたい」「必要な機能だけ身軽に持ちたい」「月額を払い続けたくない」なら内製。この軸で考えると迷いません。
そして、この2つは対立するものでもありません。まず内製で小さく作って「自社に本当に必要な機能」を見極めてから、市販ソフトを選ぶ——という使い方もできます。内製の過程で要件がはっきりするので、市販ソフト選びの失敗も減ります。大切なのは、道具を先に決めるのではなく、自社の困りごとを起点に選ぶこと。その判断力そのものが、これからの中小企業の武器になります。
よくある失敗と、その回避策
在庫管理ツールの内製は、進め方を少し外すと「作ったのに使われない」で終わりがちです。先につまずきポイントを知っておきましょう。どれも、事前に知っていれば避けられるものばかりです。
✕ 商品マスタを整えないまま、いきなり在庫管理を始める
→ 回避策:在庫管理はマスタ整備が9割です。同じ商品が違う名前で登録されていると、どんな仕組みも数を正しく数えられません。まず表記ゆれの解消と項目の統一から。ここを飛ばすと、あとで全部やり直しになります。
✕ 最初から全機能・全商品を対象にして、完成しない
→ 回避策:最初は「売れ筋・回転の速い商品」や「欠品が痛い商品」だけに絞ります。小さく作って効果を確かめ、対象を広げる方が、確実に前に進みます。全SKUの網羅は後回しでかまいません。
✕ AIが出した在庫数や発注量を、そのまま鵜呑みにする
→ 回避策:在庫の数字は発注・決算に直結します。公開直後はしばらくExcelと並走させ、結果が一致することを確認してから本運用へ。最終的な数字の確認は必ず人が行う前提で運用しましょう。
✕ 動くツールを作った時点で、安全確認をせずに本番公開する
→ 回避策:Webツールとして公開する前には、社内のWeb担当者や制作会社にセキュリティ面の確認を依頼します。データの置き場所・アクセス権限・バックアップは、素人判断で進めない領域です。作るのは自分たち、確認は専門家、と役割を分けましょう。
✕ 市販ツールを全否定して、なんでも内製しようとする
→ 回避策:多店舗・大量SKU・会計連携まで必要なら、市販ソフトの方が手堅いこともあります。内製は「必要な機能だけを身軽に持ちたい」ときの選択肢。両者を天秤にかけ、自社に合う方を選べばよく、途中で乗り換えても構いません。判断に迷うならAI内製化の進め方も参考にしてください。
これらの失敗は、裏を返せば「小さく始めて、人が確認し、専門家と役割を分ける」という3点を守れば、ほとんど避けられます。難しい技術の話ではなく、進め方の心構えの問題です。ここさえ押さえておけば、在庫管理ツールの内製は、思っているよりずっと現実的なものになります。
コピーして使える、プロンプト集
「何から頼めばいいか分からない」をなくす、すぐ試せる指示文です。( )の部分を自社の内容に差し替えるだけ。まずは1つ、コピーして試してみてください。ここにある指示文は、そのまま使うだけでなく、自社に合わせて言葉を足したり削ったりしながら「育てて」いくのがコツです。
まとめ
- 在庫管理ツールは「何が・どこに・いくつあるか」を記録し、気づかせ、ラクにする仕組み。まずは商品マスタの整備と発注点アラートから始めると効果が出やすい。
- 順番はChat → Design → Cowork → Code。STEP 3までならExcel・スプレッドシートの延長で進められ、Webツール化は最後。本番公開前はWeb担当・制作会社の確認を。
- 今のExcelは捨てるのではなく土台にする。並走で検算しながら無理なく移行。市販ツールも良い選択で、内製は「必要な機能だけ身軽に持ちたい」ときの選択肢。
在庫管理は、地味に見えて経営の要です。数が合えば、欠品も過剰も減り、資金の巡りがよくなる。そしてその仕組みを、外注ではなく自分たちの手で持てるようになれば、事業が変わっても在庫のルールを自分たちで直し続けられます。最初の一歩は、今日、いま使っているExcelをClaudeに見せてみることから。それだけで、次にやるべきことが見えてきます。
あわせて読みたい
作り方の考え方は自社FAQチャットボットをClaudeで作る手順が近い題材です。社内で使いこなす進め方はAI内製化の進め方、小さく始めるコツは中小企業のDXは小さく始めるもご覧ください。
よくある質問
プログラミングの知識がなくても作れますか?
はい、最初の一歩は日本語でClaudeに相談するところから始められます。商品マスタの整理や在庫台帳のひな形づくり、棚卸の集計は、指示文(プロンプト)を書くだけで進みます。本格的にWebアプリとして動かす段階ではコードが必要になりますが、その部分もClaudeに書いてもらえます。ただし本番運用の前には、社内のWeb担当者や制作会社に安全面の確認を依頼すると安心です。
いま使っているExcelの在庫表は捨てないといけませんか?
いいえ、捨てる必要はありません。むしろ今のExcelは「自社に必要な項目が詰まった設計図」です。まずはその中身をClaudeに見せて、項目の過不足を整理するところから始めます。Excelのまま賢く使い続ける道もありますし、入力ミスや共有のしづらさが限界に来たら、Webツールへ段階的に移す——という順番が無理がありません。
市販の在庫管理ソフトを買うのと、どちらがよいですか?
どちらが正解ということはありません。多店舗・大量SKU・会計連携まで必要なら、市販ソフトやクラウドサービスが手堅い選択です。一方で「うちの数え方・呼び方に合った、必要な機能だけの身軽なツールが欲しい」「月額を払い続けたくない」という場合は、内製という選択肢が生きてきます。まず内製で要件を掴んでから市販を選ぶ、という使い方もできます。
在庫データや仕入先の情報をClaudeに入れても大丈夫ですか?
取引先名・原価・数量などは機密情報です。社内ルールを決めてから扱いましょう。設計段階では原価や仕入先を伏せたダミーデータで試すのが安全です。実データを扱う本番環境では、利用規約やデータの取り扱い方針を確認し、最終判断は社内の責任者が行ってください。個人情報は含めないのが基本です。
作ったツールが数字を間違えていたら、どうすればいいですか?
まずは電卓や既存のExcelと突き合わせて検算し、ズレの出る条件を特定します。計算ロジックはClaudeに「なぜこの数字になるのか」を説明させると原因が見つかります。在庫の数字は経営や発注に直結するため、公開直後はしばらくExcelと並走させ、結果が一致することを確認してから本運用に切り替えるのが安全です。最終的な数字の確認は必ず人が行ってください。